2024/02/07

人生のバカンス


 人生には振り返ることが出来ない時もある。しばらく時間が経ってからようやく振り返ることが出来た時に、あの時が大きな転機だったのだと気が付く。

そんな転機を迎える前の記憶は抜け落ちていることも多いのに、転機を境に不思議と記憶は零れることなく私の中にある。


転機の前のグレーがかった、あの時間がなければここには辿り着けなかったから、それは決して無駄ではなく意味のあった時間ではあるけれど


そこから今を比較するには、まるで別人の人生を生きているような振り幅があり、コントラストが強く、でもとても美しくて、唯一無二といえるユニークさがあって、

その中心となった、私の人生におけるバカンスという時間について

ゆっくりと振り返りながら少しずつ綴っていきたいと思う。


そう、私は仕事のバカンスしか知らない人生を送っていた。

2024/01/26

Haute Couture

2年ほど前にしたためていた記事。下書きのままだったのだけれど思い出して更新することにしました。



 




上映最終日の前日。


まるで思い出してと言われたかのようなタイミングで目の前に映画情報が現れ、間に合う事ができた。


100分という短い時間の中で、若干の出来過ぎたようなストーリーはあったものの

それらを感じさせない、ハッと我に変える言葉の数々、シーンがあった。



お針子の給料について不平を述べた若いジャドに、エステルは

違う、そうではない、お金ではない、価値を生み出しているのよ、と言うようなことを言った。


費用対効果だとか、効率さだとか

世の中がそちらを向く中で


エステルの主張する、美を生み出すことの価値


お針子たちの揺るぎない美への追求


それらの想いが、ひと針ひと針に込められている、だからこそ芸術となる


自己矛盾なく、魂に忠実に生きる人々が携わるものが美しくないなど、あるわけが無い。




2020/01/29

日常の奇跡






大好きなフレグランスメゾンの一つ、ラルチザンパフューム。


最初の出会いは、表参道に素敵なブティックがあった頃、オーラソーマとのイベントでの出来事だった。

上下2色に分かれたオーラソーマのボトルを直感で選ぶ。
私が選んだボトルと同じカラーのフレグランスは、グリーンの瑞々しい香りL’eau de L’artisanと、パウダリーなピンクの美しい香りDrôle de rose 
その日私は、二本のうちの一本、
L’eau de L’artisan を選び、家へ連れて帰った。

惹かれていたもう一つの香りは、惹かれながらもなぜだか選ぶことが出来なかった。

その理由は、オーラソーマのボトルに答えが隠されていた。

その後もラルチザンが大好きになり、
Timbuktu Nuit de Tubéreuse Verte Violette 
そしてMéchant Loup 全てが記憶と共に刻まれていて、 
大好きでたまらないMéchant Loupはヨーロッパに初めて行った出張での美しい情景が、ホテルが、記憶に鮮明に刻まれている。




今夜、愛する友人からラルチザンのお話が出たときに

偶然にも彼女は、私があの時選べなかったDrôle de rose を持っていて、
そして、あの時私が選んだL’eau de L’artisanは、彼女が昔選ばなかった香りであったと判明し、
時を超え、今の自分の中にある香りだから買おうかと考えている、


そのように告げられた。


私たちは、お互いの一本目をいつどんな時に手に入れたのかはもちろん知らない。


けれども彼女との出会いの奥に
こんなにも美しい香りのエピソードがあったなんて

なんだか涙が出そうな程嬉しくて
大切な方との出会いには宝物が隠れているのだと、その奇跡をたまらく愛おしく思う。